7. 定義規定
7.1 保護対象の明確化
7.1.1 「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
7.1.2 発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの
7.1.2.1 自然法則を利用
自然法則:自然界において、経験上、一定の原因によって一定の結果が生じると いう経験則
利用:
自然法則そのものは発明ではない
自然法則に反するものも発明ではない
自然法則の利用性なしの例
単なる精神活動
純然たる学問上の法則
人為的な取り決め
自然法則を利用しているということは、自然科学上の因果律に従っているということですから、反復してかつ継続して一定の結果が実現される可能性が要求される。
反復可能性:「その特性にかんがみ、科学的にその植物を再現することが当業者において可能であれば足り、その確率が高いことを要しない」桜桃の育種増殖法事件:最高裁平成12年2月29日判決(平成10年(行ツ)第19号 審決取消請求事件)
7.1.2.1.1 ★ソフトウェア関連発明の成立性
7.1.2.1.1.1 ソフトウェア関連発明の拡大と発明の定義
日本:「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウェアは「自然法則を利用した技術的思想の創作である。
米国:1994年の Alappat 事件判決:「有用、具体的かつ有形の結果 (useful, concrete and tangible results)」 を生み出す数学的アルゴリズムの実際的応用 (practical application) については特許適格性が認められる。
欧州:欧州では、一貫して、技術的性質の有無が特許対象となる発明か否かの判断基準 とされており、どのような場合に、ソフトウェア関連発明が技術的性質を有するとい えるのかが問題となる。
7.1.2.1.1.2 ◼︎回路シミュレーション方法事件(特百選1)自然法則の利用の判断
7.1.2.1.1.3 ◼︎双方向歯科治療ネットワーク事件(特百選2)自然法則の利用の判断
7.1.2.1.1.3.1 同事件の解説
コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(河野登夫、パテント2008 Vol 61)
SOFTICヤングゼミナール2011
7.1.2.1.1.4 ◼︎対訳辞書事件(特百選3)自然法則の利用の判断
7.1.2.2 技術的思想の創作
7.1.2.2.1 技術・・反復可能性・実施可能性
一定の目的を達成するための具体的手段
「『発明』は技術的思想すなわち技術に関する思想でなければならな いとしているが、特許制度の趣旨に照らして考えれば、その技術内容は、当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていなければならないものと解するのが相当」最高裁昭和52年10月13日判決 (昭和49年(行ツ)第107号 審決取消請求上告事件)
「実施可能性」、「反復可能性」、「具体性・客観性」が必要。
7.1.2.2.1.1 ◼︎薬物製品事件(特百選6:発明の完成と拒絶理由:最判昭和52年10月13日(民集31巻6号805頁(昭和49年(行ツ)第107号))
「発明」は技術的思想,すなわち技術に関する思想でなければならないとしているが,特許制度の趣旨に照らして考えれば,その技術内容は,当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていなければならないものと解するのが相当であり,技術内容が右の程度にまで構成されていないものは,発明として未完成のものであつて,法2条1項にいう「発明」とはいえないものといわなければならない(当裁判所昭和39年(行ツ)第92号同44年1月28日第三小法廷判決・民集23巻1号54頁参照)。
7.1.2.2.1.3 スタップ細胞特許
7.1.2.2.2 創作・・人為的作用により新しく作り出すこと
発見は除外:単に既存のものを見つけ出したに過ぎないものは発見であって発明とはいえない
天然物から人為的に単離した化学物質、微生物などは、創作したものであり、「発明」に該当する
用途発明:「既知の物質のある未知の属性を発見し、この属性により、 当該物質が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明」京高裁平成13年4月25日判決(平成10年(行ケ)第401号 審決取消請求事件)
7.1.2.2.2.1 ◼︎錦鯉飼育方法事件(特百選4)発明と発見の差異
7.1.2.3 高度なもの
実用新案法第2条1項の考案の定義「この法律で考案とは、自然法則を利用した技術的思 想の創作をいう」との区別
主観で足りる
★高度性がないとの理由で、発明成立性を否定し、特29条1項柱書きで特許性を否定できるか?
7.1.2.4 未完成発明
7.1.2.4.1 当業者が反復継続して所定の効果を挙げることができる程度まで具体的・客観的なものとして構成されている
7.1.2.4.2 ★未完成発明の取り扱い・・特36の記載不備(実施可能要件を満たさない)
7.1.2.4.3 平成4年(行ケ)100号審決取消請求事件
7.1.2.4.4 ◼︎原子力エネルギー発生装置事件(特百選5)危険の防止と発明の完成
7.1.2.5 欧州特許法での発明概念
欧州特許法 (発明自体の定義なし)
52 条 特許を受けることができる発明
(1) 欧州特許は,産業上利用することができ,新規であり,かつ,進歩性を有するすべての 技術分野におけるあらゆる発明に対して付与される。
(2) 次のものは,特に,(1)にいう発明とはみなされない。
(a) 発見,科学の理論及び数学的方法
(b) 美的創造物
(c) 精神的な行為,遊戯又は事業活動の遂行に関する計画,法則又は方法,並びにコンピュ ーター・プログラム
(d) 情報の提示
(3) (2)は,欧州特許出願又は欧州特許が同項に規定する対象又は行為それ自体に関係して いる範囲内においてのみ,当該対象又は行為の特許性を排除する
7.1.2.6 イギリス特許法での発明
発明の定義なし
特許法第1条
(2) 特に以下のものは、本法の適用上、発明とは認めない。
(a)発見、科学的理論又は数学的方法
(b)文学的戯曲的音楽的又は美術的著作物その他審美的創作物
(c)精神的行動、ゲーム若しくはビジネスのためのスキーム、規則若しくは方法、又はコンピュータプログラム
(d)情報の提供 から構成される何らかの事柄。
但し、特許または特許出願が上記のもの「それ自体」(as such)に関する場合のみ特許の対象から除外するものである。
7.1.2.7 ドイツ特許法での発明
積極的な定義規定なし
以下の対象が保護適格性を欠く(特許可能な発明ではない)として消極的に定義されている。
特許法第1条(3)
(a)発見、科学理論、及び数学的方法
(b)美的創作
(c)精神的活動を行なうため、遊戯を行なうため、又はビジネスを行なうための計画、規則、及び方法、並びにコンピュータ・プ ログラム
(d)情報の提示。
なお、この消極的な除外規定は、(a)-(d)それ自体(as such;als solche)に対し保護を求めた場合に適用される(特許法第1条(4))
判例法上、例えば、発明の目的が技術的な性質を有する及び/又は技術的な考察を要する場合、発明の特許性は排除されない(Logikverifikation判決(2000))。つまり、発明は少なくとも技術的(technical;technish)でなければならない。
7.1.2.8 米国特許法での発明
Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.
第 101 条
新規かつ有用な方法,機械,製造物若しくは組成物,又はそれについての新規かつ有用な改良を発明又は発見した者は,本法の定める条件及び要件に従って,それについての特許を取得することができる
7.1.2.9 中華人民共和国専利法での発明
第二条 本法でいう発明創造とは発明、実用新案、意匠を指す。
発明とは、製品、方法又はその改善に対して行われる新たな技術方案を指す。
実用新案とは、製品の形状、構造又はその結合に対して行われ、実用に適した新たな技 術方案を指す。
意匠とは、製品の形状、図案又はその結合及び色彩と形状、図案の結合に対して行われ、 優れた外観を備え、かつ工業への応用に適した新たな設計を指す。
7.1.3 考案とは、自然法則を利用した技術的思想の創作
7.1.3.1 実用新案とは、物品の形状、構造又は組合せに係る考案
7.1.3.1.1 物品とは
7.1.3.1.2 形状
7.1.3.1.3 構造
7.1.3.1.4 組合せ
7.1.4 意匠とは、物品(物品の部分を含む。第八条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
7.1.4.1 物品とは
7.1.4.2 形状
★形状のみの意匠は存在するか?
7.1.4.3 模様
★模様のみの意匠は存在するか?
存在しない。形状のない意匠はないから。ただし、織物・服地は形状が決まっているので、模様のみを特定して出願すること可
7.1.4.3.1 ★文字を含む意匠の取り扱い
7.1.4.4 色彩
★色彩のみの意匠は存在するか?
存在しない。
7.1.4.5 結合
★なぜ、実案のように「組合せ」と言わなかったのか?
7.1.4.6 視覚を通じて美感を起こさせる
7.1.4.7 ★保護が要請される領域
7.1.4.7.1 画像デザイン一般
7.1.4.7.2 タイプフェイス
7.1.4.7.3 ピクトグラム
7.1.4.7.4 アイコン
7.1.5 商標とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(標章という)(H26年改正)
7.1.5.1 商標は選択物(採択)
7.1.5.1.1 新しいタイプの商標
7.1.5.2 創作物としての商標
★商標が創作物である場合に、識別力にどのように影響するか。侵害論への影響を考察せよ
7.1.5.2.1 ネーミング
7.1.5.2.2 キャッチコピー
7.1.5.2.3 ロゴデザインの創作
7.2 実施概念
7.2.1 発明の実施
7.2.1.1 物の発明
7.2.1.1.1 ★改修・改造も生産か・・・消尽の問題と関連
7.2.1.2 方法の発明
7.2.1.2.1 純粋方法
7.2.1.2.1.1 ●生理活性物質測定法事件
検査方法が生産物の販売に必要だとしても当該生産物の販売を禁止できない
7.2.1.2.2 生産方法
7.2.1.2.2.1 ★直接生産物に限るか
7.2.2 考案の実施
7.2.3 意匠の実施
7.2.4 標章の使用
7 定義規定